Column

W-EVOコラム「チームガール日米比較」

その②「タイトルⅨ」アメリカの女性スポーツ発展のワケは「法律」にある。

慶応義塾大学ラクロス部の米国遠征を通じて、私たちは、スポーツが生活にしっかりと根づいていることを実感した。その象徴の一つが、さまざまな学生スポーツで活躍する女性指導者の存在だ。スポーツ先進国・ 米国には、彼女たちの存在を下支えする法律があることをご存じだろうか。

「今、私がこうしてコーチという仕事に就けているのは、〝タイトルⅨ゛があったおかげ」

語るのは、ジョージワシントン大学女子ラクロスチームのヘッドコーチ。この言葉が物語るように、例えばNCAAのDivision1カテゴリーに属する女子スポーツチームの約4割に、女性指導者がいる。アメリカの学生スポーツには・「女性スポーツ指導者」というポジションがしっかりと確立されているのだ。

日本の学生スポーツに女性指導者は少ない。多くのチームでは、OGがボランティアで指導に当たっている。残念ながら、女性指導者がビジネスとしてチームのコーチをするケースはほとんどない。

ではなぜ、アメリカでは女性スポーツ指導者というポジションがしっかりと確立されているのか。その基礎となったのが、連邦教育法第9篇(通称「タイトルⅨ」)。アメリカで1972年6月に可決された連邦法である。

この法律は、すべての学生が学校内外で平等な機会を受ける権利を保障する、というもの。連邦政府の財政支援を受けるすべての教育制度または活動で、性別による差別を禁止している。学校のスポーツチームは何のスポーツであれ、女性が入部を希望した場合、「女性だから」という理由で断ることはできない。また男性オンリーのスポーツチームがあれば、女性チームも同様に作らねばならない(その際、予算は均等に配分される)。

アメリカで女性スポーツが盛んなことには、そんな理由がある。そして多くの女性指導者がプロとして選手の育成に力を注ぐからこそ、アメリカのチームガールたちは卒業後の進路に・「スポーツ指導者」の夢を描く。

タイトルⅨのおかげで、米国の女性には、男性と同様にスポーツをする機会が与えられている。彼女達はスポーツを楽しむことで健康的な身体と優れた人間性を作り上げ、それが社会で活躍するためのベースになる。このタイトルⅨの制定が、米国の女性スポーツの発展と女性の社会進出を後押ししているのは、言うまでもない。

女性スポーツがしっかりと根づく米国のウーマンズトレーニング、フィットネスマーケットの規模は約1兆6千億円。790億円と試算される日本のマーケットの約20倍。そして、この数字は今後まだまだ伸びるといわれている。大きなマーケットが形成される背景には、女性が長くスポーツに取り組める環境がある。そして、それを支えるタイトルⅨ。もしも・「日本版タイトルⅨ」が制定されたら、日本の女性スポーツは大きく発展をするに違いない。何とも魅力的な話である。

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