Interview

アルペンスノーボーダー・竹内智香「時代の常識にとらわれず、進化し続けたい。」(Part.1)

アルペンスノーボーダー・竹内智香選手インタビュー(Part.1)

ありとあらゆる情報があふれる現代社会。「痩せる」「美しくなる」というフレーズを、そこかしこで見る。それらの言葉はきっと、多くの女性の心をくすぐるに違いない。でもその中に、本当に価値のある情報はいくつあるのだろう…? そんな中、美辞麗句を並べ立てただけの情報に惑わされず、独自の価値観で歩み続けるトップアスリートがいる。アンダーアーマー/DNS woman 契約アスリートで女子スノーボード・ソチ五輪銀メダリストの竹内智香選手だ。新シーズンの幕開けを前に、本物を見極める秘訣と筋肉へのこだわり、そして、女性らしさについて聞いた(全3回)。

■トレーニングは嫌い。でも今は、苦しくても限界まで頑張れる。

――新シーズン、あらためて世界のトップを目指す上で、新たに取り組んでいることはありますか。

「パワーをもっとつけるため、フィジカルトレーニングを以前よりしっかりと行うようになりました。実は今まで、フィジカル強化がスノーボードの上達につながると考えたことはなかったんです。

活動拠点を日本からスイスに変えた時、何度も体力測定をしました。その時、私の数値は欧州の選手と比べたら大人と子供。でもレースを行うと、不思議とそこまでの差はなかった。ですからフィジカル強化の必要性を切実に感じることがなく、ここ数年は技術を磨くことだけに力を注いでいました。

一昨年、筋力を上げようと思って、10本滑る体力をつけるためにインターバルトレーニングを行いました。それが本当につらくて…その時、もう2年間はやらないと決め、実際に昨年1年間はまったくしなかった。でも昨年、そのツケが雪上で出てしまって…。最後のところでエネルギー切れというか、もうひと踏ん張りができなかった。

また、キャリアを重ねていくうちに、徐々に技術の伸びしろが少なくなってきた気もしていました。そんな状況の中、どうしてもモノにしたいテクニックがあり、それを形にするにはもっと筋力が必要だと痛感。今年の春から夏にかけて、フィジカルトレーニングを積極的に行いました」

――フィジカルトレーニング はすなわち自分との戦い。本格的にフィジカル強化に着手して、どのように感じましたか。

「すごく嫌です(笑)。やっぱり、苦しいことは嫌ですね。私はもともと、嫌なものは嫌とはっきり言うタイプ。また私は、頑張ったこと、努力したことはスノーボードに生きてこないと意味がない、とも思っています。

ジュニア時代、チームの方針でフィジカル強化とストイックな食生活に取り組むなど、厳しい環境に身を置いて競技力を磨いた時期がありました。でも結果として、それがスノーボードにもリザルトにも生きてこなかった。そこで、思い切ってスイスに行き、ストイックな環境を一度リセットして自由に過ごしたら、結果が出た。

そんな経験もあり、努力したからといって、それがすべて結果につながるわけじゃない、努力=結果ではない、とわかりました。だから、必要だと言われても自分が納得できなければ、フィジカル強化を頑張ろう、私生活を厳しくしよう、とは思えなかった。よくも悪くもそういう経験をしてしまったわけです。

でも、ソチのシーズンにインターバルトレーニングをやってみて、その結果、メダルを手にすることができた。そして次の年、そのトレーニングをやめたら結果が出なかった。やったことはすべて自分に返ってくる。それを身をもって経験しました。だから今は、苦しくても限界まで頑張れる。やると決めたからには、必ずやり切ります。

もう競技者生活も、それほど長くありません。だから後悔しないことが大事。いい形でやり切って、いい結果を出して競技者人生を終えたい。最近はそう思っています」

■平昌への3年間を、全速力で駆け抜ける。

――2018年の平昌五輪を見据え、現在の心境はいかがですか。

「この前のシーズンは世界選手権以外のワールドカップには気持ちがなかなか高まらず、流れに身を任せました。世界選手権や日本開催ワールドカップ、自分自身の中で重視していた大会では気持ちが高まりました。シーズンが終わると、自分の中に『もっと頑張りたい』という思いが出てきて…。やってみたいトレーニングもありますし、新しくチャレンジしたことをもっと極めたい。今は自分でも驚くぐらい、モチベーションは高いです」

――これからオリンピックまでの3年間、モチベーションを保ち続けることは難しいことですが、その間の競技イメージは描けていますか?

「競技者としてトップの座に居続けるのは大変なことです。どんな相手と戦っても勝ち、常に表彰台に上がる。それは難しいこと。でも私自身の競技者人生を考えたら、競技を続けているイメージを持てるのは3年先まで。そこから先はまったく見えない。だから、この3年間を全速力で駆け抜けたい。そんな、今までの私にない新たな考えが生まれています」

――その心境に至った根底には、具体的にどんな思いがあるのでしょう。

「トップ選手は誰でも、勝ち続けるにつれて戦いにくさを感じるようになります。ライバル達は追いつこうと研究を重ねてきますし、下位の選手達は怖いもの知らずで、一か八かで攻めてくる。それがたまに当たり「火事場の馬鹿力」のようなものを発揮することもあります。

毎試合そういう状況で、それを2年、3年と続けるのは本当に苦しいことだと感じていました。でも最近は、それならば迫り来るライバル達をさらに突き放せる選手になれたら、と思っています。トップの座を守ろうと意識するのではなく、ライバル達に強いプレッシャーを与えることのできる選手でいたいです」

(Part2へつづく)

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