Interview

ラグビー女子日本代表・鈴木実沙紀「強い気持ちを持って、流れを変えられる選手になる。」(Part.1)

ラグビー女子日本代表・鈴木実沙紀選手インタビュー(Part.1)

15人制と7人制のラグビー女子日本代表選手で、リオ五輪とワールドカップという二つの大きな目標を追いかける鈴木実沙紀。彼女は現在、関東学院大学ラグビー部で男子部員とともに激しい練習の日々を送っています(2015年9月卒業予定)。Part.1では、彼女がラグビーを始めたきっかけ、そして男子の選手と戦う恐怖を克服した経験について、話を聞きました。

■下手に気を使われるぐらいなら、ふっ飛ばされた方がいい。

---鈴木選手は現在、関東学院大学のラグビー部に所属して、男子選手とともに練習する毎日を送っているとのことですが。練習はすべて男子と一緒に行っているのですか?

「練習はコンタクトゲームも含め、ほぼすべてのメニューを一緒にやります。コンタクトする時、もしかすると男子選手は少し加減をしてくれているのかもしれませんが(笑)、一緒にやらせてもらえることにすごく感謝しています。

 大学の選手は大きくて上手い。当たると、ポーンと飛ばされますよ。逆にケガなんてしないぐらい思い切りなので、むしろ安全かも、というほど(笑)。でも、下手に気を使われるぐらいなら、ふっ飛ばされた方がいい。ヒートアップして『お前いたの?』と気づかれないぐらい方のが、気持ちの入った練習ができます」

---男子部員はみんな、女性として扱ってくれるのでしょうか…?

「みんなには、チームの一員として扱ってもらっている感じです。少し言い方は悪いですが、女性を扱う感じではありません(笑)。でも私も変に女の子扱いされると、かえってやりづらい。だから、ありがたいですよ」

■私は確かに男子よりも弱い。でも、やると決めたのだから、やる。

---鈴木選手は以前、新体操をやっていたそうですね。なぜ、ラグビーに転向しようと思ったのですか?

「これはもう、出合いです。新体操は小学校に入る前から中学1年生まで、7年と少しやっていました。試合に出たりもしていたのですが、ラグビーに出合ってしまった、としか言いようがないですね。

 小学生の時、学校の授業の一環として横浜市のタグラグビー大会に出ていたんです。それが楽しかったので、タグラグビーのクラブチームに入りました。それですっかりハマってしまい、新体操は中学1年生で辞めてしまいました。両立は無理だと思い。

 タグラグビーがなぜそんなに楽しかったのかというと、男の子に勝てたから。私はもともと、かけっこで男の子にぜんぜんかなわなかったんです。でもタグラグビーでは、ステップワークを使って男の子を抜き去ってトライできた。『ラグビーは男の子に勝てるスポーツなんだ』と思ったら夢中になってしまい、クラブチームで中学3年生までタグラグビーを続けました。

 私は中学1年生のころからユースの代表に選ばれていたのですが、当時、私達と同じグラウンドで女子の日本代表が練習していたんです。代表の皆さんはグラウンドの外では私達ユースの選手に話しかけてくれたりと、すごく優しかった。でも、グラウンドでは目の色を変えて激しくプレーしていて、その変わりっぷりがすごくカッコよくて…。ラグビーに賭ける熱い思いが伝わってきて『ああ、私も桜のジャージを着てプレーしてみたい』と思うようになりました」

---千葉の市立船橋高校に進学して、フルコンタクトのラグビーを始めたそうですね。

「先輩が市船で男子と一緒にやっていることを聞き、私も! と男子ラグビー部に入りました。私が入った時は3年に1人、2年に1人、同級生がもう1人の計4人、女子部員がいました。市船は男子の新入部員の半分が経験者で、半分は未経験。初心者の男の子達と一緒に練習して、基礎を固めていきました。『女子だからこの練習はやらせない』などということはなく、高校2年生ぐらいには男女の体格差はかなり出てくるのですが、それでもすべて一緒にやらせていただきました。

 15人制のラグビーを体験するのは初めてで、しかも私のポジションはFW。コンタクトプレーはすごく大事です。最初は正直、練習で男子に当たるのが怖かった。でも怖がっていると相手も困りますし、かえってこっちも危ない。

 それが吹っ切れたのが、入学してひと月ほど経った時の練習試合でした。女子は高校の公式戦には出場できませんが、相手チームがOKしてくれれば、高校1年生同士の練習試合には出してもらえます。高校で入学してひと月弱の時、初めて練習試合に出場した時のことでした。

 相手チームに100㎏ぐらいあるんじゃないか、という大きな男の子がいたんですが、私達が女子だということは見ればすぐにわかるので、狙ってきたんです。私はそれを怖がってしまい、まったく止められなくてチームに迷惑をかけてしまって…。

 ビビッていた自分が本当に悔しくて、嫌になりました。そして、怖がっている自分がひたすら情けなかった。でも思ったんです。『ここは女子を受け入れてくれる数少ないチームなのに、こんな不甲斐なさでは申し訳が立たない。私は確かに男子よりも弱いかもしれない。でもやると決めたのだから、やらなきゃダメなんだ』って。そう開き直った時、すべてが吹っ切れた気がしました」

---そして卒業後は、関東学院大学に進みました。

「関東学院の当時の監督さんを存じ上げていて、高校3年生の時、進路について聞いて下さったんです。『まだ決まっていないんです』と言ったら『関東学院にぜひ来ないか』と。大学も男子のラグビー部でやりたいという思いがあったので『男子ラグビー部に入れていただけるなら、ぜひ』と答え、受け入れて下さることになりました。

 とはいえ高校と違い、関東学院には女子部員がおらず、私が1人目。男子部員も最初は『女子が入るの? マネージャーじゃなくて?』という感じでした。そのため、最初は溶け込むのに苦労しました。でも今ではチームにすっかり溶け込んで、楽しくやらせてもらっていますよ」

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