Interview

なぜ日本一のチームをつくれたのか 女性監督のコミュニケーション術

1月23日、東京都内のホテルで、スポーツ界において2014年度に功績を残した指導者を称える「第2回 ジャパンコーチズアワード」が開催されました。授賞式では、男性指導者が受賞者のほとんど占める中、東京国際大学女子ソフトボール部の三科真澄監督が、艶やかな着物姿で華を添えていました。


三科監督は、現役時代、女子ソフトボール日本代表として、アテネ、北京と2大会連続で五輪に出場し、北京では金メダルを獲得。指導者の道へと飛び込んだのは2010年。部員集めから始め、創部わずか5年目のチームを大学日本一に導きました。
そんな三科監督に、女性リーダーとして女性ばかりの集団をまとめあげる秘訣を聞きました。

「女子選手は、自分だけを見てほしい願望が強い」

――女性の指導者として女性ばかりの集団をまとめる上で大変な点はありますか。
やはり、女性同士なので言葉に出さなくてもわかってしまう分、彼女たちが隠したい点も見抜いてしまうということはあります。女性なので選手が感情的になることはよくありますね。

――選手が感情的になるのは、具体的にどういう場面ですか。
女子選手には、自分だけを見てほしいっていう願望が強い子も沢山いるんです。例えば、一人の選手に付きっきりで指導していると、『なんで監督は私を見てくれないんだ』とか『なんでこの子には、こういう優しい言葉をかけるのに私にはこういう言葉しかかけてくれないんだ』とか、選手自ら言ってきたことがあります。ですので、『私に対して言いたいことがあれば、何でも言いに来なさい、一人で思いをため込まないで』と言っています。女の子ってよくまとまってしまいますよね、すぐに集団になろうとする習性があるというか。不平不満を持った集団からは結局、マイナス的なものしか生まれない。そうなる前に、「私に面と向かって言いに来て!私も指導者になったばかりで、常に正しいわけではない、失敗もするのだから」と。

――実際、選手の立場から監督に直訴するというのはなかなか勇気のいることですが、あえてそれをやりなさいと促すのですね。
度を超さなければ、感情を表に出すことは悪いことではないと思うんです。感情をコントロールできればコミュニケーションは図れると思うから。だからこそ、私の弱点も選手たちに見せてから、その上でちゃんと選手と向き合います。そして、話してくれたことに対しては、とことん納得いくまで話し合いますね。

――感情的になっていると1、2回、話し合ったくらいでは納得してもらえないのでは。
はい、もう顔に『まだ納得いっていません』と出ていますから。とことん1時間、2時間、半日だろうが次の日までだろうが、ずっと話し合います。

――そういうところは女性の集団ならではという感じですか。
選手である前に女性でもありますからね。お互い根気強いですよ(笑)。
やはり選手たちも、わかってほしいという気持ちがあるので、そこはしっかり汲み取って大切にしてあげたいですね。

「選手とディズニーランドにも行きます」

――三科流のコミュニケーションの取り方は他にもあるのでしょうか。
グラウンドでは厳しく、一球もおろそかにしない練習を徹底しているので、口数はもしかしたら少ないかもしれません。でもグラウンドを出たら、うちの部は、みんなでディズニーランドに行ったり、お風呂に行ったり、海に行ったり、バーベキューをしたり家族のようにみんなでどこかへ出かけようというのを心掛けています。そういう時に『この子はこういう時に自分の役割を発揮するんだ』と選手たちのグラウンドでは見せない一面を見ることができるんです。

――それらのイベントは監督が発案されるのですか。
いえ、選手自らですね。選手には、受け身になってほしくないんですね。自分でこうしたい、ああしたいっていうことを“完全積極”っていうんですが、その完全積極で何かを提案して、発言して、実行してほしい。だから、選手から言ってくるのを待ちます。自分たちが1年生だろうが、2年生であろうが、『監督、どこかに行きたいです』と選手達が提案をしてきた時に開催します。やはり、受け身だと自分の意見が、わがままなのか意志なのか判断ができなくなって成長にはつながらないと思うんです。失敗することを恐れて消極的に人の話を聞いたりする選手もいますので、そういう意味で遊びにもソフトボールに関しても、積極的に自分の意志を言ってほしいと思っています。

「目標を叶えるには、ビジョンを持ち、それを言葉にすることが大事」

――強いチーム作りの過程で苦労した点はありますか。
私たちのチームには、華やかな経歴を持つ選手はほとんどいなくて、最初は、ソフトボールで勝ちたい、日本一になりたいといくら口で言ってもなかなかイメージが持てなかったと思うんです。そういう意味での意識改革という点が大変でしたね。しかし、勝利のイメージを植え付けるため宇津木総監督や北京五輪優勝メンバー、日本のトップアスリートの方々の講義を行って選手たちに目標やビジョンを持つことの大切さを教えていきました。そうすることで、選手個々も目標が明確になりましたね。そしてそれを達成するためには言葉にすることが大事だと思うので、ビジョンや気持ちは常に言わせていました。

――そのような指導のベースにはやはり恩師の宇津木総監督の影響もあるのでしょうか。
そうですね、やはり現役時代から宇津木総監督は、“人間力”、つまり、目配り、気配り、思いやり、履物の乱れは心の乱れだから、生活=グラウンドだよということを常におっしゃっているので、その意識は私も重きを置いています。また、言葉は人を傷つけることもあるけど、温めることもできるから言霊を大切にしなさいと言われてきました。私自身も一人の人間ですから、時には感情的になって矢で刺すような言葉を発して失敗した経験もあります。そういう時に、宇津木総監督の言葉を思い出して、選手たちを温めてあげられるような言葉を使いたいと自分を省みて指導に活かしています。

「リーダーに必要なものは、‘信念を持ちながらも自分を疑うこと’」

――三科監督のように女性のリーダーとして後に続きたい方々へメッセージを。
自分は間違っていないという信念を持つことと、それとは逆に、常に自分を疑うこと。『私はこれでいいのか?』と問いかけを続けることが大切だと思います。私は、選手たちを教育するのではなく、共に育んでいくと思っているので、泣いて、笑って、私も教育してもらう。その中で自分の志は曲げないでやっていく。それが大切なことかなと思います。

――次なる目標は
この度の表彰を受けて、更に周りの方への感謝の気持ちも増しましたし、やはり多くの方に感動を与えられるチーム、そして、スポーツ界を活性化する素晴らしい人材を輩出していきたいなと思います。成績的な部分では、まずは春季リーグからしっかりと勝負にこだわった戦いをして、どの大会もタイトルを狙っていきたいです。

インタビュー中、三科監督の口からは何度も「選手ありき」という言葉が出てきました。指導者という上に立つ者の視点だけで競技や指導を行っていくのではなく、目標を成し遂げるために辛さ喜びを選手と共有する“私と選手は一心同体”という愛情に満ちた厳しくもあり、優しい思いがうかがえました。このような女性指導者の活躍はスポーツ界を盛り上げる上で欠かせないものなのではないでしょうか。

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