Interview

なでしこジャパン・宇津木瑠美「美しさを支えるのは、強さ。強さを支えるのは、美しさ。」(後編)

なでしこジャパン 2015FIFAワールドカップメンバーにも選ばれた宇津木瑠美選手。
2010年から現在までフランス女子サッカーリーグ・モンペリエHSCで活躍を続ける彼女のアスリートライフに迫ったインタビュー後編。
前編はこちら。

■フィジカルは重要。テクニックがあっても、コンタクトで負けたらボールに触れない。

--フランスで戦うにあたって、フィジカルトレーニングの重要性を感じることはありましたか。

 そうですね。フィジカルトレーニングはアスリートとしてのベースだと思います。サッカーは全身の筋肉を使うので、例えば陸上選手などよりも身体は大きい方がいいし、トレーニングも全身まんべんなく行うべきだと思います。

 フランスに来て海外の選手の力強さを感じ、フィジカルコンタクトの重要性をあらためて知りました。海外の選手と比べて、日本人はテクニックが優れています。でもテクニックは、ボールを触って初めて発揮できるもの。海外の選手はそれをわかっているので、なかなか触らせてくれないんです。私の1年目がそうで、結果、いいところを一つも出せなかった。ボールを持てれば取られない。でも持てない。結局、存在感をアピールできない。そんな悪循環に陥っていたんです。

 私の身長は168cm。日本では大柄な方ですが、海外ではそうでもありません。アメリカやドイツは大きい選手が多く、平均身長172~173cmで体重も60kg以上ある。でも日本の選手は平均身長158~159㎝で体重も50kgぐらい。当たられたらきついです。

 じゃあ、ボールを持てない理由は何か。やはり、ボールがない時に潰されているんですね。空中戦やスペース確保の時、身体のぶつかり合いで負けていた。フィジカルコンタクトにどれだけ耐えられるか。その大きな課題で、フィジカルトレーニングで克服していきました。

--栄養摂取についてはどうでしょう。宇津木選手はサプリメントを摂取していますか。

 摂っています。身体作りは本当に大事。フランスでは、選手は当たり前のようにプロテインなどのサプリメントを摂取しています。正直、日本の選手はあまり摂りませんね。食事でカバーできると考えていると思います。でも、しっかり食べるのは当たり前のことですよね。食事と休息だけでは、世界レベルではやっていけないのは明白。日本の選手も、サプリメントをもっと取り入れるべきだと思います。

 ただし女性は男性と違い、身体の構造上、常にいいコンディションでトレーニングができるわけではありません。プロテインもたくさん摂ればいいものではありませんし、適量を守るのは意外と難しい。でも日本の女子アスリートは、サプリメントを摂らないことで栄養失調や貧血になっているケースも多い。脂質などを避けようとしすぎた結果、そうなっているのかもしれません。そういう意味でもサプリメントは大事。しっかりトレーニングをして栄養をきちんと摂れば、パワーは確実につきますから。

--日本では、プロテインなどのサプリメントを摂ると太る、と考えている女性は依然として多いのが現状です。宇津木選手はその点について、どう考えますか。

 それは、摂り方の問題ですよね。正しく摂れば必ず効果はあるし、太ることもない。知識のなさが原因になっているケースも多いでしょう。きちんと説明を受けた上で正しく取り入れれば、決して妙なことにはならない。正直、日本ではまだまだ取り入れている選手が少ないので、間違った認識が伝わり、結果、間違ったイメージを持ってしまうようなケースが多いように思えます。

■生理とはまっすぐに向き合う。そして、その時に自分がどうなるかを知る。

--女性のアスリート特有のテーマとして、月経があります。つらい時にはどう対処をしていますか。

月経とは、ずっと付き合っていくしかない。だからまっすぐに向き合って、生理の時に自分がどうなるかを知ることが大切だと思います。とはいえ、どうしてもコンディションが悪い時はあるし、気持ちでカバーせざるを得ないことも多い。私も適切な対応ができるように、日々様々な方法を探しています。常に試行錯誤を続けていて、一度よかったからまた同じ効果を得られるか、というとそうでもない。でも、そこで嫌にならないようにすることが大事ではないでしょうか。

--また、女性としては結婚や出産を意識することも多々あると思います。宇津木選手もやはり、そういった思いは持っていますか。

 サッカーはコンタクトがあるので、見ている以上に激しいスポーツ。コンタクトスポーツは、子供を産んで復帰する確率が低いといわれています。出産前と同じレベルまで心と身体を持っていくのが難しいので、多くの選手は子供を産んだら辞めていきますし、結婚も先延ばしにせざるを得ない。そして、女子サッカーもメジャーになりつつあるとはいえ、現役中に一生分稼げる選手はほとんどいません。第二の人生を考えねばならぬプレッシャーは、年を重ねるごとに強くなります。みんな、何歳までに結婚をして…と考えはしますが、引退のタイミングがわからないまま、サッカーが大好きだから続けているような状況ですよね。私も以前から「30歳までには…」と言っているのですが、先輩方は皆さん「私もずっとそう言ってた」と(笑)。

 また30歳手前ぐらいから、身体が少しずつ変わり始めると聞きます。私も時々、練習や試合の疲れが次の日に残ったり、筋トレで追い込むと2日後に筋肉痛が出たりすることがあります。でも澤穂希さんなど30過ぎてもプレーしている方達からは「20代のころよりも今の方が身体は元気」と聞きます。澤さんのようにきちんとすべきことをすれば、何歳になっても成長できる。それがはっきりとわかりました。

■オリンピックに出られなかった悔しさは、オリンピックでしか晴らせない。

--ケガもあり、前回のロンドン五輪ではメンバーに入れませんでした。改めて、当時のことを振り返っていただけますか。

 今はもう気にしていません。ケガはするべくしてするもので、する時は必ず理由がある。だから、自分がその程度のレベルだった、というだけの話です。そもそも、ケガをしなかったら絶対にオリンピックに行けたとも思わないし、自分にそれだけの落ち度があっただけの話。他の選手達が自分より上にいただけで、選ばれる人は選ばれるなりの努力をしてきた。ケガをするのはそれだけ自分に何かが足りないからで、自分の実力を過信していた結果だと思います。自分より上の選手に嫉妬するというよりも、自分が落ち度に気づいていなかったことが残念です。そこは、自業自得ですね。

--その悔しさを踏まえて、これからの目標や夢、意気込みをお願いします。

 オリンピックに出られなかった悔しさを晴らすには、オリンピックで活躍するしかない。4年間積み上げてきたものを成果として出すためにも、そこまでいいコンディションでいようと思っています。そしてもっと近い目標でいえば、フランスリーグで優勝したい。日本人が助っ人で来てチームが優勝できないのはダメなので、私が来てこのチームは強くなった、と思ってもらいたい。だから、誰が見てもわかる結果を出したいです。

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