Interview

上村愛子 一生懸命チャレンジするものを常に持っていたい

4大会連続冬季オリンピックに出場し、今なお、モーグル界をリードし続ける上村愛子選手。来年はいよいよソチオリンピック。前回大会からこれまでを振り返りながら、ソチに向けた意気込みを語っていただきました。

―――前回大会のバンクーバーオリンピックのあと1年間お休みされて、2011-12年のシーズンに復帰されました。復帰しようと思った理由をお伺いできますか?

バンクーバーが終わった時は、“もうやりきった!”という気持ちが強くて、いったんお休みをいただくことにしました。でも、休んでいる間に東日本大震災が起こって、状況も気持ちも一変しました。震災後に被災地に行ったんですが、「愛子ちゃん来てくれてありがとう」とか、「オリンピック見てたよ」という言葉をたくさんいただいて。自分はただ行っただけなのに、喜んでくれたり笑顔になってくれたりするのを目の当たりにして。ずっと自分は自己満足でスキーをやっていたような気がしていたんですが、実はそのことでたくさんの人を笑顔にできていたのかもしれないって気付いたんです。日本のみなさんがスキーを見てくださったり、笑顔になってくれたらそんな嬉しいことはないと思うようになって、またあと3年頑張ろうと思うようになりました。

―――休んだことで心境の変化はありましたか?
前にも増して毎日が楽しいなって思えるようになりましたね(笑)。休んでいる間は家のことをやったり、友達や家族と会ったりして、それはそれで楽しい時間を過ごしていたんですけど、改めて選手生活を再スタートしてみて、“自分が頑張るべき場所はここなんだ”と強く実感しています。試合だけじゃなくて、日々のトレーニングや身体のメンテナンスをすることがとても大切な時間に思えてきて。また選手としてやっていけることに感謝しながら毎日を楽しく過ごしています。

―――選手生活の楽しさを実感する反面、やはりトップで戦うための日々のトレーニングは厳しいこともあると思います。モチベーションの源になっているものはありますか?
もちろん実際のトレーニングは過酷な部分もあります。苦しいトレーニングもあるし、筋肉痛にもなるし、身体に痛いところも出てくるし(笑)。でもそういう毎日を続けた先には1番いい滑りができる瞬間が待っていて、その滑りができたときは応援してくれる周りの人たちも笑顔になるんだろうなと思っていて。しんどいと思う瞬間もたくさんあるんですけど、それを超えたあとは自分も幸せだし、周りも笑顔になって幸せになるという確信みたいなものがあって。過酷なトレーニングも、いつかみんなで笑えるためのものって思えば乗り切れるものです。

自己満足でやっていると思っていたスキーが、多くの人を笑顔にしていた。

――――――『W-EVOLUTION』はスポーツをする女性を応援するサイトなので「女性」の視点でお伺いします。女性がスポーツをするという意味でこれまで困ったことはありますか?

うーん、大きな問題を感じたことはないかな。男性と一緒にトレーニングすると体力差を感じることはありますけど、それは困ることというより仕方ないことですし。ものすごく些細なことでいえば、トレーニングするとき短パンをはくのが恥ずかしいことかな、トレーニングでけっこうな筋肉がついてしまってるんで(笑)。男の人って短パンTシャツが当たり前で、恥ずかしいという気持ちが少なそうでうらやましい。最近はまあ吹っ切れて短パンだけでトレーニングするようにはなったんですけど(笑)。

―――愛子さんがスポーツウェアを選ぶときの基準やこだわりはありますか?
機能性と動きやすさ、そして“やるぞっ!”とモチベーションが上がるものですね。かわいいけどあまり機能性がよくないと気持ちよく動けないし、気持ちよく動けるんだけど選べるものが少ないと女性としてはつまらなかったりするし。だから、その3つがすべてそろっているのが理想です。

―――普段、愛用しているスポーツウェアはありますか?
長くアンダーアーマーを愛用させてもらってます。さっきの条件でいうと、まず機能性と動きやすさが本当にびっくりするぐらい優れている。モーグルという激しい競技をやっているので、動きを妨げないウェアであることが絶対条件なんです。といっても、マイナス20℃、30℃のところで競技をするので寒さを防がないと身体がもたない。以前はたくさん重ね着したり、身体を温める努力をあの手この手で試していたんですけど、重ね着するとどうしても動きにくいし、温めることばかりに時間と労力をかけていられない。だから、冬用のコールドウェアに出会ったとき、それ1枚とスキーウェアを着るだけで暖かかったことにものすごい驚いて。身体にフィットするけど動きは妨げないし、なんてストレスのないウェアだと思いました。動いて欲しい関節すべてがちゃんと動いてくれる感覚があるんですよ。しかも、モーグルって1本滑るとものすごい汗をかいて、そのままリフトに乗ると身体が冷えてしまうんですけど、すぐ乾くから温かいまま。絶対的に信頼を置いているウェアです。

―――ウェアは気持ちの部分でも影響がありますか?
雪山で使うウェアの場合、身体にぴたっとフィットするウェアなので“今から滑るんだ”っていうスイッチが入る。気持ちが強くなれる感じがするんです。適度に身体を締め付けてくれるほうが、今からやるぞっていう気持ちになったり、サポートしてもらっている安心感にもつながりますね。そして暖かいのはもちろんなんですが、前よりもすごく優しく肌にあたるというか、肌触りがものすごく気持ちよくて。このウェアだったら、気持ちよくスタートが切れる気がする。暖かさと柔らかさがあって、闘うときでも包み込んでくれるという安心感がありますね。

"やるぞっ!"とモチベーションを上げてくれるウェアが好き。

―――少しプライベートのお話も聞かせてください。今日、愛子さんがいらしたとき肌がツルツルで思わず触りたくなってしまいましたが、美容面で気を付けていることはありますか?
いやー、あんまりないんですけど(笑)。強いていえば、雪山はすごく乾燥するので、とにかく保湿という言葉に敏感ですね。でもあとはそんなこだわりはないです、すみません(笑)。

―――プライベートはどんなファッションが多いですか?
行く場所にもよりますけど、全体的にリラックスした感じが好きですね。着心地のいいシャツを着て、コットンのパンツみたいなシンプルな感じです。でも、シルエットとか、生地の感じとか、ちょっとしたことにこだわって違いを楽しんだりしています。

―――オフシーズンはどのように過ごされていますか?
オフの長さにもよりますね。丸一日のオフの場合は、家で過ごすより自転車でどこかに行ったり。出かけるのがすごく好きなので、車や電車で出かけたりもします。でも、やっぱり疲労がたまってるときは家でTVを見たりしながら、とにかくリラックス。でも、これをしたら絶対リラックスできるという決め事はないので、気持ちに任せて自由気ままに過ごしています(笑)

目標に向かって頑張って、気持ちが充実していることが美しさや強さにつながる。

――――ご結婚されて変わった部分もあったと思うんですけど、生活面、精神面、競技への影響など、変化があったことがあれば教えてください。
なんか、強くなったと思います。まだ、旦那さんと自分だけなので、付き合っているときと生活自体はあまり変わらないのですが、でもひとりでいた頃より、すごく強くなったというか、心が安定するようになりましたね。結婚する前は、繊細な部分もけっこうあったんですよ(笑)。ただ心が弱いというか、気持ちがすぐ折れちゃうというか。スキーに関しては強い心で臨もうという気があったんですが、そのほかのことは不安になりがちだったり、誰かに背中を押してもらわないと動けなかったり。でも今は隣にいてくれている人が、特に自分から何も言わなくても、常に背中を押してくれて。「愛子だったら一生懸命やるでしょ」と当たり前のように言ってくれて。そういうさりげない日々のことが、気持ちを強くしてくれているんじゃないかなと思います。

―――結婚がすごくプラスになっている?
そうですね、一番弱かった部分が強くなっているので。

―――とてもいいお話しですね。ところで愛子さんが思う、理想の女性像や、理想の生き方はありますか?
目標を持っている人、やりたいことがある人、いきがいを持っている人というのが、見た目も美しいと思うし、気持ちの充実感が美しさや強さにつながると思います。実際、自分が休んでいたときを振り返ると、もちろん毎日が幸せだったんですけど、明日は何をしたいとか、いつまでに自分はこうなっていたいという目標が持てなくて。すごく元気なんですけど、でもどことなく表情が暗かったりしていたと思うんです、今思うと。そう考えると、今はまた選手として目標を持っているので、表情が明るくなったのかなって自分でも感じる。やっぱり生きがいがあることはすごく幸せなんだなって実感しています。そういうものが滲み出るというか、明るい色を発せられる人間であり続けることが理想だし、目標ですね。

―――同性として魅力的に思う女性はどんな人ですか?

キラキラしている人、全員ですね。有名な人という意味ではなく、身近な友達をはじめとして身近にもキラキラしている人いっぱいいるので、そういう人をみると目標を持って明るく生きていきたいって思います。そのためにはやっぱり、生きがいとか、一生懸命チャレンジするものをいつも持っていたいです。

―――そういう意味では、来年はいよいよ最大のチャレンジとなる冬季オリンピック。今期の振り返りと、来期に向けた意気込みを教えてください。
今季はソチオリンピックに向けて課題を明確にすることを最優先にしていました。試合に出ないと気づけないことが多いのですが、今回はワールドカップ、世界選手権大会、全日本選手権大会、すべての大会で“気付き”があったことが最大の収穫でした。滑りとしては納得のいく試合はほとんどなかったのですが、全日本選手権大会のラストから2本目の滑りは来季につながる滑りができたと思います。ソチオリンピックまで10か月を切ったこれからは、未来の自分、家族みんなが後悔のない時間を過ごすために、やれることは残さずやり切ってソチに臨みたい。これまでのオリンピックも毎回、金メダルを目標に掲げて7位、6位、5位、4位と順位を上げてきました。この目標を変えては上に上がることは絶対にないと思うので、夢のメダルを手にできるように目標は高く持って頑張ります。

―――日本中のみんなが応援していると思います。ぜひ頑張ってください。楽しみです。
はい、自分を信じて頑張ります!

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