Interview

上野由岐子 1年でも長く現役でいるために、 "今"を大切にしたい

―――早いもので北京五輪の金メダルから5年が経ちますが、現在も変わらず日本女子ソフトボール界不動のエースです。現役で、しかも第一線で活躍し続けるために、やはりこれまで以上に体調管理に気を遣われていますか?

そうですね、もともと栄養やコンディションニングに興味があったというか、必要に迫られたところがあって、ずっとサプリメントは使い続けています。

―――必要に迫られてとは?

2004年のアテネオリンピックのとき、大事な場面で体調を崩して自分の思うようなパフォーマンスができなかったんです。それをきっかけに食事、栄養に関して勉強し始めて。そのうち、食事だけではうまく摂りきれないものを補う方法があることを知って、サプリメントやプロテインを使い始めました。一番苦労したのがプロテイン探し。当時は牛乳で割るタイプが主流だったんですが、炎天下で練習や試合をするソフトボールに牛乳を持っていくのは現実味がなくて。水で簡単に飲めるものがないかとかなり探しました。あるにはあるんですけど、味がいいのがなかったんですよ。

―――やはり味は大事なんですね。

なんでもそうですけど、イヤなことってしたくないじゃないですか。身体にいいものだから多少は我慢して飲むんですけど、まずいと結局、続かない。味が断念するきっかけになってしまうんです。それが、今、愛用しているDNSのプロテインだけは続いたというか、初めて袋が空になった。飲みきることができた。そのくらい飲みやすかったんですよね。DNSのプロテインに出会ったのは大きかったです。

――――プロテインを使い始めてから10年近く経っていますが、変化を感じている部分はありますか?

一番の変化は“やることはやっている”っていう自分のなかの安心感。継続しているその過程だったり、自分がちゃんとプロテインを飲んで栄養素をしっかり摂ってという、やっていることそのものが自信につながるというか。

―――どちらかというと、心の部分での満足感。

心の安定剤ですよね。極端に言えばそれがプロテインじゃなかったとしても、そういったものがあるかないかっていうのは大きい。やっぱり気持ちが違えば身体も変わるものなんで。

―――プロテイン以外で欠かせないサプリメントは?

今はリカバリー系です。とくにDNSの『R4』は手放せません。やはり身体の変化があって、年を重ねるごとに疲労感を感じるようになってきたり、“昔はこんなはずじゃなかったのに”って思いながらプレーしている部分もあるので、少しでも心の拠り所をつくりたいという意味もあって。気分だけじゃなくて、本当に身体がちゃんとリカバリーされているんですけどね(笑)。

――――アスリートは身体が何よりの資本ですから、年齢とともにこれまで以上に意識が高まるかもしれませんね。

自分はソフトボールを仕事としてやらせてもらっているし、この身体がないと正直、生きていけないというか。だからこの身体をいかに自分で守っていくかってものすごく大事で。本当の意味でメンテナンスできるのは自分だけなんですよ。特に口にするものに関しては、必ず自分の身になるものだと思うのでより強く意識しています。だけど逆に、一番難しいところでもあるんですよね、自分の身体がいつどこでどう変化するっていうのは正直自分でもわからない。でもわからないのが人間なので、それに対してどう対応して、体調不良でもいかに最低限のパフォーマンスができるかということが問われているんだと思う。

「チーム競技じゃなければアスリートはとっくに辞めていると思う」

―――これまでのインタビューや著書のなかで、ソフトボールはチームワークや信頼関係が大事だとおっしゃっています。チームスポーツなので当然と言えば当然だとは思うんですけど、かといってただ仲が良いこととチームワークはまた違うことだと思いますし、トップレベルになればなるほど難しいこともあると思います。信頼関係を築くコツなど、経験のなかで感じていることはありますか?

とにかくコミュニケーションをとることですね。話をしないと相手の考えていることはわからないし、自分の考えていることも正確に伝わらない。自分が思っているよりも相手は考えてくれていたり、逆に何とも思ってなかったりってことはよくあることです。近くにいるからわかるだろうじゃなくて、チームメイトだからこそよく会話する。話をすることでだんだんみんなが親密な関係になって、親密になるほどチームワーク、絆が強くなっていくと思うんで。

――――いつも一緒にいるチームメイトと、代表のような可変性のある場所ではチームワークや信頼関係の作り方は変わるものですか?

多少はありますね。代表が楽なのは、みんながチームワークの大切さをわかっているのであえて言わなくてもできているというか。やっぱりそういう選手の集まりが代表ということでもありますよね。でも逆に、代表は代表でトップアスリートの集まりだからそれぞれに個性も強いしいろんなやり方や考え方があるので、ひとつにまとめていくのが難しかったり。お互いにどういうプレーをするのかを理解するまではすごく時間はかかる。

―――チームに完成形や完璧な回答はないと思いますが、代表ともなると高度なものだろうと推測できます。

そうですね。チームワークっていうのは本当に生き物みたいで、一瞬で結束もするし、一瞬で崩れもする。そういった意味では本当にもう、“心の塊”っていうか。みんなの気持ちがひとつになるためのきっかけがなければなかなかひとつになれないので、そういった意味では難しいものです。

―――失敗や困難もありますよね。

でもぶつかることなんて正直、当たり前だと思うんですよね。お互いのやり方を認めあわなきゃいけないと思うけど、絶対そこに不一致は生まれてくるだろうし。でもやっぱりチームって、どれだけ我慢できるかだと思うんで。みんなが自分のやりたいことやったらチームにならないんで(笑)。

――――ずっとチームスポーツをしていて、「個人競技がやりたい」と思ったことはありませんか?

いや、自分はないですね。どっちかっていうとチーム競技でよかったなっていつも思います。たぶん個人競技だったら、自分はもうとっくの昔にアスリートじゃなくなっています。

―――難しいことがあっても、チーム競技のほうが面白いですか?

面白いです。自分がダメでも試合に勝てるし、自分が頑張っても試合に勝てる。いろんな意味で面白さがあって。自分がどん底でもみんなが背中を押してくれたり、助けてくれる。だからこそ頑張れる。だからこそ次、助けてあげようって思える。お互い持ちつ持たれつというか。そういう関係を続けられるからこそ毎日が本当に楽しいですね。

「プライベートではリフレッシュがうまくできるようになりました」

―――上野さんというとストイックにソフトボールと向き合っている印象が強いので、少し息抜きにプライベートなお話を伺いたいです。休日はどんな風にお過ごしですか?

家でのんびりしているか、車でドライブに出かけることが多いですね。一日休みのときは身体を休めることを重視してしまうんですけど、2~3日とかの長期休暇をもらえたときは、山に登ったり、滝を見に行ったり、近場に旅行するのが結構好きです(笑)。
―――オンとオフの切り替えは上手なほうですか?

今は、ソフトボールと違うことをすること自体が自分にとってはすごくリフレッシュになっている。昔はソフトボールのことを忘れるとすごく不安だったんですよ、まさに四六時中ソフトボールのことを考えていたっていってもおかしくないくらい。

―――徐々に変わってきたんですか?

そうですね、徐々に変わりましたね、昔は山に登ったりしませんでしたから(笑)。そんな時間もったいないと思ってたし、練習時間が終わっても、ほかの選手が練習してるんじゃないかって思うと練習しなくてはいられなかった。でも今はちょっとソフトボールから離れることで、逆によりソフトボールに集中できるというか。やっぱりそれだけきっと考え方が変わってきたり、身体が変わってきたりしているのかなって思うし。でも、何をやっていても自分はソフトボールで生きていると思っているので、TVでいうと“主電源は切ってない”という感じ。オフのときTV画面は消えてるけど、いつでもボタンを推したらTVが付く状態にはなっているんですよ。だけど、昔に比べて、TVが消えている時間が多い、という感覚ですかね。

―――少し肩の力が抜けて楽になった部分もありますか?

ソフトボールに対する見方は変わりましたけど、正直、楽になったのか苦しくなったのかはわからないですね(笑)。

「オリンピック種目に戻ってほしい。それが一番の目標であり、願いです」

――― 一昨年から選手兼コーチになって、また少しこれまでと立場や見る目線が変わったと思いますが、何か変化はありますか?

一番は自分の結果にこだわらなくなったことですね。3点取ったら2点取られてもいいから打たせて取りたいとか、勝てればある意味、点を取られてもいい。昔は味方が何点取ってくれても絶対ゼロで抑えてやるみたいな思いで投げていたんですけど、そういった自分の結果よりも、もっといい打球を取らせてあげたいとか、もっと連係プレーができるような打球を打ってもらいたい、みたいな感覚です。ただ抑えるだけではなく、アウトの取り方をすごく考えるようになりました。

―――よりチームのことを考えるようになったということですね。

そうですね。やっぱり守っているバックも若手に切り替わってきているし、だからこそ試合でしか経験できないことを経験させてあげたい。そういう思いで今はマウンドに上がっています。

――――話を伺っていると上野さんは本当に人格者だと感じるんですが、上野さん自身の人格形成にソフトボールは影響していると思いますか?

そうですね、なんていったらいいんだろう、なんか親には失礼かもしれないんですけど、どちらかというと自分はソフトボールに育ててもらったというか(笑)。ソフトボールを通して今の自分があると思っているんですよ、考え方にしても、知識にしても。だからこそ、ソフトボールを通して今度は恩返しをしたいなってすごく思っています。

―――今後のアスリートとしての夢というと、指導者のほうに?

そうですね、最終的には。でも、できるまでは選手でやりたいと思っています。変な言い方ですけど、いろんな指導者の方を見ていて、選手でいることが一番幸せだと感じることが多いので、今は一年でも長く選手でいたいと思うようになりました。選手でいる間に背中を見せるじゃないですけど、後輩たちに何かを感じてもらえるような選手でいられればいいなと思っているし、どれだけ伝えていけるかということだと思う。そして、いずれは指導者としてソフトボールに携わっていきたいし、いかないといけないなっていう思いですね。自分を犠牲にしてという言い方はおかしいんですけど、どれだけ恩返しできるかっていうのを考えながら、若手の育成だったり、自分が経験したことをどれだけ伝えていけるか。自分がいなくても勝てるチームを作っていけたら最高だなと思っています。

―――オリンピック競技の復活が決まるまではスッキリしない気持ちもあると思いますが、今、具体的な目標はありますか?

自分自身の目標は、一年でも長くソフトボールができるように、今をどう過ごすかを大事にしていきたいと思っています。長くやりたいから遠くを見てソフトボールをするのではなくて、一年でも長くできるように、今を大事にしていきたい。そしてもちろん、オリンピック種目にもう一回戻ってほしいというのが今、一番の目標でもあり、大きな願いです。

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