全てやりたい。じっとしていたくない。

 interview 高野人母美
  • 強さの秘密
  • 美しさの秘密
  • がんばれるのは今だけ

「現役モデルの美人ボクサー」の肩書きを見て「モデルとボクシングって両立できるの!?」と思わずにはいられない。 しかし見事にやってのける女性がいる。それが高野人母美(たかの・ともみ)さん。強さも美しさも手に入れているという、W-EVOLUTION が目指す、まさにお手本のような方。そこで、W-EVO編集部では、高野さんの撮影現場にお邪魔し、一日密着。彼女の振る舞いから学ぶとともに、強さと美しさのヒントを直接探るべく、インタビューを行ってきました。全3回、それぞれ「強さ」、「美しさ」、「生き方」のテーマでお伝えしていきます。

パシッ!パシッ!とミットにパンチがめり込む音が響く。そのスピードや迫力に気おされそうになる。
ボクシングのスパーリングで汗を流す男女の姿。・・・男女!?
そう、激しいパンチを打ち込んでいるのは女子ボクサーである。手足が長く、無駄な贅肉を一切感じない研ぎ澄まされた身体。明らかに美しいオーラが放たれているが、どう見ても美容のためのフィットネスレベルではない。張りつめた空気から、競技として鍛えられたスキルの高さと真剣さが伝わってくる。

モデルと、ボクサー。あまりにギャップのある2つの世界で挑戦を続ける女性がいる。高野人母美さんだ。
その長い手足、整った顔立ちを見れば、モデルとして抜群の素質があることは一目瞭然。
そんな彼女が、なぜボクシングに挑戦しようと思ったのだろうか。

「小学生の頃は、本当はピアノやそろばんが習いたかったんです」
でも、親にすすめられたのはサッカーだった。チームメイトは男子ばかり。紅一点の存在は、イジメの格好の的になった。
「気が強かったんで、やられたらやり返してました(笑)。でも、サッカーが楽しいとは思えなかったんです」
ご両親にサッカーを辞めたいと訴えたこともあったそうだが、「続けることに意義がある」と認めてもらえなかった。その意義を、当時10歳程度の子供に理解できるはずもない。しかし、彼女は6年間サッカーを全うした。その頃から根性は鍛えられていたのだろう。やることはやった。だから、後はスパッとやめた。
「中学校では帰宅部に。3年間、部活も、勉強さえもまともにしなかったですね」
何にもやりたいことがない。将来の夢もない。そんな彼女が変わったのは中学3年のときだった。
「周りが受験勉強をはじめた頃、このままじゃいけないってようやく気付きました。それで、通学路にあったキックボクシングのジムに通うようになったんです」
自分でやりたいと思って始めたキックボクシングは、とにかく楽しかった。
「生きてる! って感じがしました」と語る。通常、練習は土日のみだが、それだけでは物足りず平日も通っていたそうだ。土日に友達と遊ぶことよりも、キックボクシングがしたかった。

7年間のめり込んだ後、ボクシングに転向。そこで新たな目標ができた。ロンドンオリンピックである。
「でも、そんな簡単なものじゃなかったです。試合も負け続けて、勝ったことがなかった。他にやりたいことを探してもうまくいかない。そんな時に、ジムの会長さんから『プロになっちゃえよ』と言われたんです」

けろりと言ってのけるが、当時はすでにモデル業もスタートしていた。モデルとボクシングの兼業が難しいことは想像に難くない。そんなことはおくびにも出さず、とにかく前向きなエネルギーが全開だと感じるが、辛いことはないのだろうか。
「トレーニングは、呼吸が止まるんじゃないかと思うくらい苦しいです」
当たり前である。言い換えれば、そんな当たり前のことしか苦しくないのである。兼業であることの辛さなんて何もない。 とはいえ、そんな苦しい想いをしながら、なぜそこまでがんばるのか? 答えは明快だった。
「絶対に負けない。それだけです」
寒いのも苦手で、冬の朝のランニングが生きてる中で一番辛いと言う。低血圧なので寝起きも弱い。 でも強くなるためには、と毎日続けているという。それだけではない。
「昨年から、毎朝の座禅もはじめました」
プロデビューしてまだ経験の浅かった当時、試合に向けて調整が進む中、気持ちの焦りを感じていた。

試合に向けて、毎日お寺に通っては座禅を組み、瞑想して自分の勝っている姿だけを想像する。
「メンタルの弱さがずっと課題なので、それを鍛えるために、いいと思うことはどんどんやっています」
なんでも楽しそうに話す明るい彼女だが、その言葉の端々にはストイックに修練を重ねる日常が垣間見える。
試合後のオフ以外の期間は大好きなお酒もたつ。試合に向けたスイッチが入ると、友人との連絡さえ絶つ。とにかく徹底している。

正直なところ、キックボクシングに出会うまでは、やりたいことも、やらなければいけないはずの勉強さえもしていなかった。それが、キックボクシングをきっかけに、意欲的なアスリートに変身した。 生きる目的がなかったかつての時代と比べて、正直見違えるような変化だろう。
スポーツは人をここまで変えるのか。

インタビューの後日、ある知らせが入った。彼女のプロ第5戦が決定したとのことだ。
「口は嘘ついても、身体は嘘つかない」
インタビュー当日は「まだ年明けのお正月モードが抜けきってなくて、だめです」と舌をペロリと出していた彼女だが、そろそろ本番のスイッチが入っている頃だろう。第5戦で進化した彼女の活躍を楽しみだ。

高野人母美 プロ第5戦

vol.02「美しさ」の秘密

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